24.ファインディング・ドリーを見てきたのだ

映画『ファインディング・ドリー』を見てきたのだ。

 

前作の時点で、「過去にとらわれて未来に怯えるマーリン」と対照的なキャクタとして配置された「今を生きる(記憶障害なので今を生きるしかない)ドリー」の物語が語られるということもあり、期待と不安は半々だった。(まともに作ったら、とんでもない暗い映画になるはずなのだし、雑に逃げた作品なら見てもしょうがないものになる)

 

結果、開始5分で目がぐしゃぐしゃに泣いてしまった。ピクサーに逃げる意思がないことが分かり、安心して物語に没入できた。

 

「過剰なアクションとスペクタクル!」

「ご都合主義!」

「万能過ぎる仲間!」

など、リアリティラインは前作の『ファインディングニモ』と大きく異なっている。きっとそうした批判があるのではと思う。(まだ他人のレビューを見ていません)

映画を見ると、自分編集版(ここ要らなかったな、もっとこここうすれば、みたいなの)を頭の中で考えるものだと思うが、そこで考えたどのバージョンよりも、映画版の方が笑顔で映画館を出ていく人が多いだろうと思えた。

 

とはいえ、その自分編集版(ご都合主義とスペクタクル抜き版)に勇気づけられるメッセージが残ってないわけでもなく。むしろその些細な希望の途方もなさに、他のすべての欠点はどうでもいいと言える作品でした。

素晴らしい

5億点!

 

昔、成人の時にライオン刈りをする部族の話を読んだことを思い出した。三人一組のチームを作るそうで、チームメンバーは1.知恵のある者、2.力のある者、3.輪を乱す者の三人で組ませるのだと聞いた。なんかそれだと成功率が高いらしい、という文章で、その時のわたしは「何が役に立つかわからないね」という理解でしばらく過ごした。

そして時は流れ、たまたまお酒の席でその話を友人にし、友人が「輪を乱すってことは、そいつは勇気の人ってことだな」ということを聞いてようやく納得がいったのだ。

輪が乱れる理由は、「実力以上のことをやろうとするから」であり「考える前にやっちゃうから」なのだ。

 

まだしばらく、時間があくとドリーのことを考えてしまう。

いい映画だった。

まだ自分編集版は終わってない。

23.アトムハートの秘密について

GBA鉄腕アトムが面白かった。

ASTRO BOY 鉄腕アトム アトムハートの秘密

ここからはネタバレあり&プレイしたことのうろ覚えで書く。

 

アトムについてそれほど詳しいわけではないが、GBAの『ASTRO BOY 鉄腕アトム アトムハートの秘密』は面白かった。もちろん手塚治虫は亡くなっているため、オフィシャルではないがアトムと天馬博士の関係が深掘りされたストーリーになっている。大変見事なストーリーでジーンと来てしまった(古風な言い回し)。ストーリーを書くのに大変な時間をかけたのではと想像される。おそらく制作開始前から個人的に考え続けていた内容を機会に恵まれて作品に織り込んだのではと思っている。

 

アトムはその知名度とは裏腹に、問題が山積みな作品だ。しかし既存のキャラクタを使ってゲームを作る以上、改変してよい設定の範囲には限界がある。

アトムの簡単な設定を以下に書く。

ーーーーーーーーーー

アトムは天馬博士に作られたロボットだ。

天馬博士は息子が交通事故で亡くなり、その悲しみのあまりアトムを作った。

しかしアトムが人間のように成長しないことに腹を立てた天馬博士はアトムを捨ててしまう。

アトムは紆余曲折の末、お茶の水博士の元で暮らすことになる。

アトムの活動内容は平和維持。

アトムの世界はロボットが普及した未来世界。

ロボットに対する過酷な扱いに対し、ロボットから反対運動も起きている。

アトムはロボットでありながら人間の下につく。ロボットである我が身、ロボットの主張の正しさと人間の横暴さを目の当たりにしながら葛藤することになる。

ーーーーーーーーーー

 

この設定を引き継いだストーリーで、どう考えてもむちゃくちゃなだけだった天馬博士とのエピソードもクリアされた物語が書かれている。

繰り返すが手塚治虫オフィシャルではない。

ではないが、もうわたしの中でアトムの世界の真相はこれでよいと思うのだ。

 

ロボットの人権問題も「ぼく、よくわからないけどきみが間違ってると思う」とか言ってロボットの指導者アトラスと戦ってしまうアトムを見て、アトラスを応援したくなった子どもはいっぱいいたはずなのだ。

そういう、手塚作品から種を受け取り温めてきた読者の夢が結実した稀有な作品だと思う。

オススメです。

 

 なお、アクション部分も超名作です。

操作して気持ちよく、フィールドを自由自在に飛び回り、様々なオブジェクト壊し、破壊の限りを尽くすことができる。(あれ?平和の使者?)

開発はトレジャー。

あの『罪と罰』のトレジャーですよ。わたしは『罪と罰』以降 過去のトレジャー作品を探してプレイしていた時期があり、そこで出会ったのです。

横スクロールアクションで探索要素で手塚キャラが総集合するのも嬉しい。ブラックジャック火の鳥など有名どころも、ランプのような渋いキャラも出てくる。(でも、ブッダは出ない。ファンも多いのにどうしてだろう(笑))

当時の携帯機ゲームという限られた予算の中「手塚ゲームの決定版を作るぞ!」という気概が感じられる。

 

今プレイする環境を整えるならDS LITEがベストだろう。(ギリギリ1世代前ですよ!)

オススメです!

 

 

21.アンパンマンには借りがある

アンパンマンミュージアムに行ってきたのだ。

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横浜市アンパンマンミュージアムは無料エリアの飲食店、有料エリアの展示エリアから成る。

有料エリアの展示は、

1.ジオラマコーナー、

2.実物大キャラクター立像、

3.触れるパン工場(レプリカ)、

4.街や屋台の再現エリア、

5.アンパンマンの歴史展示場

6.やなせたかし劇場(着ぐるみショー)

 

となっている。

当ブログらしくざっくり一言解説すると

 

1はストーリー世界観の展示
2は記念写真用
3.4は非売品のプロ仕様おもちゃ展示場(ゲームで言う、アーケード)
5は普通の博物館(子どもは冷めるヤツ)
6はテーマパークに来て元をとった感のため

 

という感じだろうか。

1で想像力をかきたてることで2、3、4の体験がよりよいものに感じられるようにという展示側の意思を感じる。ゲームで言うと、ファイナルファンタジーのムービーなどと同じ効果を狙ったものだろう。(この効果を表す専門用語もあるのかもしれないが、無学なので「FFのムービー効果だ」とかなんでもゲームに例えるマンになってしまう)

 

対象年齢が低いこともあり、施設内にキッズコーナーなどもある。また、再入場も可能なので一度無料コーナーに出て飲食をすることも可能だ。

 

子どもはジオラマコーナーを楽しんだようだ。

確かに情報量は原寸大よりもずっと多い。それで遊ぶことで完成するものと違い、ジオラマは触れられないがゆえに、作り手がストーリーの一瞬を切り出すことができる。人と一緒に来ていなかったり、もっと空いている時ならばもう少し時間をとってもよかった。

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アンパンマンについては色々言いたいことがあるが一番言わなければならないことは

「子どもに言葉をくださり、ありがとうございます。また、テレビの前で子どもを安心してほったらかしにできた時間は、その時まさに必要な休憩でした」ということになるだろう。

 

アンパンマン映画は大体見たが、その中で一番面白かったアンパンマン映画

それいけ!アンパンマン ハピーの大冒険 [DVD]

何回見ても序盤の人助けシーンとラストの展開にはウルっときてしまう。

任侠映画としても秀逸だと思う。

だんだん、ハピーのモヒカンの見た目もマッドマックスのように見えてきてカッコよくなってくる。

 

「天丼マンが出てくるといつも頭の中がバイキンマンに食べられるので、不安な気持ちになる」

 

バイキンマンアンパンマンの顔を基本的には食べない。(食べるのは施された時だけ、というのが色々な想像をかきたてる)」

 

「名犬チーズはペットだけど、町の人はカバオ、ウサコなどと動物」

 

「SLマンは自力でブレーキ、アクセルをコントロールするが車掌も乗ってる」

 

ハンバーガーキッドの肉は何か(ズートピアでも気になる)」

 

などとまとまらないことを考えて過ごしたことを忘れないうちに書いておこう。

 

20.今までで一番面白いと思った一人用ゲームについて書く

罪と罰 宇宙の後継者』 

罪と罰 宇宙の後継者

罪と罰 宇宙の後継者 [オンラインコード]

とても面白いのである。

とてもとても面白いのである。

大学生の頃に格闘ゲームにハマり、以降一人用のゲームを遊ぶ時には「対戦がないんじゃなー」とか言っていたわたしが、遊ぶほどにニヤニヤし、家に来た友人には挨拶もそこそこに遊ばせては「どうです? 面白いでしょう」となるほどに、このゲームは面白かった。

とんだ浮かれポンチである。

人はゲームが面白いだけでこれほどにも浮かれポンチになるのだ。

その熱はしばらく続き、他の人のネットに書かれた感想を読み漁っては「やっぱこのゲーム面白いな」とせっかく読んだテキストからなんの学びも得てないような感想を言ってはニヤニヤと過ごしていたのだ。長文の感想などを見つけた時は、家に帰って時間をとって読もうなどという意味不明な行動をしていたことも記しておく。

 

とまぁ、それぐらい面白いゲームです。なお、わたしの個人的な浮かれポンチ具合を記載したのは、わたし自身に精神的露出癖があるからではなく、楽しんでいる姿を他人に見せることが他人に元気を与えるのだと信じているためで、ひいては天下万民のため、キレイなインターネット空間に寄与する行為だと信じているからだということは書いておきます。

 

ゲーム内容の説明

ゲーム内容を操作系と共に紹介する。

このゲームはWiiというハードが開発時から想定していたであろう操作系を実現している。

つまり、リモコンのポインタで照準を操作し、リモコン裏のBトリガで弾を打ち、ヌンチャクのスティックで自機を操作する。

そんな3Dアクションシューティングである。

無敵移動のダッシュ、近接武器のソード、威力抜群の溜めショット、敵弾をソードで跳ね返すカウンターなどが、ここに彩りを加えるシステムとして機能している。

カメラ操作はどうなの? という疑問についてはカメラ操作は不能であり、ほぼ強制スクロールとなるという回答になる。

これは持論だが、強制スクロールのほうが一人用ゲームは面白くなる。少なくともわたしのような人間にとっては。この話は長くなるから別の機会に。

単純にわたしは短時間に面白いものを味わえるのが好きなのだ。せっかちガールなのだなと思っていただければ。

 

このゲームならではの体験

狙うことと避けることを同時に操作させるゲームは意外と少ない。いわゆる2Dシューティングは、固定された射線を持つ自機を操作するゲームがほとんどだ。

罪と罰では、照準の操作と自キャラの操作が切り離されかつ同時に操作できる。

このゲームを遊ぶと、敵を狙う時には自キャラの操作が散漫になり、避ける時は狙いが不正確になることを感じるはずだ。

これこそがこのゲームの面白さのキモだと思う。

「画面のどこを見るのか」が非常に重要なゲームで、目線は自キャラと敵との間をめまぐるしく移動する。

「目が忙しい」という言い方で伝わるだろうか。

はじめたての頃は物凄く目が疲れる。ポインタ操作のコツさえ掴めば(下手なうちは画面外にポインタが行ってしまう)、操作が非常に直感的であるため、「手が追いつかない」とはほとんど思わない。素晴らしい操作感だ。

また、難しいことを考えずとも連打するショットでボスの体力を削る気持ちよさ(みんなすごい悪い顔して敵の体力ゲージ見て削ってるのだ)、ショットの150倍の威力のある溜め撃ちの気持ちよさは筆舌に尽くしがたい。

 

オススメする上で言っておくこと

難易度については任天堂作品の中では高めに設定されている。easy normal hardの三段階があるが初めての人は迷わずeasyを選ぼう。

難易度は高いが、リトライポイントが細かく設定されてるため、同じところで詰まってしまうことは少ない。コンティニューも無限なので、死んで回復しながらちょっとづつ進むゲームだと思っていただければ。わたしも「本当にこれeasyなの?」と思いながらクリアした。

クリア後にもう一度easyを遊ぶと「あ、これは操作に慣れていたらeasyという意味だったんだな」と気づいた。ボスの攻略法も自然と身につくようになっているので、3周目でnormalへと挑戦していけた。

1周あたり7時間程度とアクションシューティングというジャンルを考えるとボリュームは多い。

 

その他素晴らしいところ色々 

ステージモチーフも豊富で素晴らしい。

ステージを先に作って、強引にストーリーを繋げたのでは?と思うきらいもあるが、面白いステージを優先してくれたのは本当に感謝したい。

 

0.宇宙船

1.廃都市

2.海底

3.空中庭園

4.日本妖怪の森

5.砂漠でのハイスピードバトル

6.マグマ基地

7.???

 

キャラクターも魅力的。

詳しくは書かないが、一時期子どもの名前にイサと名付けようとしていた。そのくらい魅力的です。

 

最後にこのゲームを作った人たちの幸せなインタビューを載せてこの記事を終わろう。

本当に素晴らしいゲームが遊べて嬉しかった。

開発者には感謝の言葉しかない。

ありがとうございました。

 

 社長が訊く『罪と罰 宇宙の後継者(そらのこうけいしゃ)』

 

 

19.オススメはしないけど今まで一番面白いと思った漫画について書くー3

今回で最終回。

私がどう読んだかについて語ります。

 

『ザ・ワールドイズマイン』

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン  全5巻 完結セット [コミックセット] (ビームコミックス)

この作品は群像劇のようなスタイルをとっています。各登場人物に強烈な背景があり、それぞれのキャラクタが状況に面した時に言いそうなセリフを言い、そのセリフがいちいち練られていて超カッコいい。また作者の癖として風刺の効いたギャグが多い。トシモンの襲撃に際し、嬉々としてカメラを担いで野次馬に来る高校生が「ピューリッツァー!」と言いながら、マシンガンの流れ弾をくらうシーンなどは、不謹慎ながら何回見ても笑ってしまう。

本作は出てくるキャラクタが本当に生き生きとしていて、いたるところで示唆に富むエピソードを読むことができます。最後のシーンに作者の主張が詰まっているのではなく、すべてのシーンに作者の主張が詰まっている。
物語に対して、何か人生の教訓とか生きる指針や、示唆、暗示、など 要は「物語以上のもの」を感じ取ろうとする人には、充分応えてくれる作品だと思います。同じような読まれ方をする本が他にもあって、それは聖書とか神話とか、そういうジャンルがそう。

というわけで、この作品のジャンルというか、わたしの評価は「毒の強い聖書」です。

一生モノで読んでいける作品。

 

(話はズレるが文系理系の分岐点が、この、「物語に物語以上のものを感じ取ろうとするところ」にあるのではないか、とわたしは思っている。

現実だけでは不十分なのだと感じているのか、現実しかないと覚悟を決めてるか、の違いだろうか。どちらが優れているとかはないし、どちらの要素一色というわけでもないだろうが)

 

最後に各主要キャラクターのわたしの感想を書こう。

 

トシ=惑う人。自分の外に答えを求める者。勇気が足りないと状況次第でここまで行ってしまう。気をつけよう。

 

モン=答えを持ってそうに見える者。作者が善良なため、種明かしをしてくれてよかった。

 

マリア=モンの復活も合わせて考えると、絶対的な承認の象徴。翻弄される人。

 

塩見=答えを出さない人。出さないことの災禍については責任を取らない。日本人。

 

ヒグマドン=神。理不尽。力。自然。コミュニケーション不可能な存在などの象徴。

 

SWAT隊長 薬師寺さん=現実主義者。現実が自分の想像の範囲を超えた場合、俺のせいじゃないし、と責任転嫁する。上司にしたい。

 

秋田県警本部長 須賀原さん=現実主義者。現実が自分の想像の範囲を超えた場合も責任を取る。尊い。上司にしたい。

 

マタギ 飯島さん=世の理の外で自活することに成功した人間。星野にいいとこ見せようとして死んだ。わたしはこういう死に方をしないように気をつけたい。

 

新聞記者 星野=物語を通じて子ども→オトナになりかけと変化する者。彼が主人公ではないので、成長途上で物語は終わる。

 

総理大臣ユリカン=オトナの象徴。オトナなので敵も多く、話のキモに関わる前に足を引っ張られて舞台から消える。

 

アメリカ大統領=USA! USA!

 

 

次回からまたゲームブログに戻ります。

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こちらはゲームボーイストリートファイター2春麗エンディング

 

18.オススメはしないけど今まで一番面白いと思った漫画について書くー2

前回のつづきです

 

 『ザ・ワールドイズマイン』

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン  全5巻 完結セット [コミックセット] (ビームコミックス)

 

3.[大館市ヒグマドン災禍編]

【あらすじ】

秋田県大館市にて、地中に埋めて隠しておいた爆弾を取りに来たトシモンは、マリアと再会する。

マリアのことを気にするモンにイラ立つトシ。マリアを人質にして同行することに。

ちょうどその頃、大館市にヒグマドンが来週。

ヒグマドンの体長は50メートル近くに巨大化していた。まるで怪獣映画のように大館市を破壊して回るヒグマドン。

その混乱の最中、トシモンはマリアの友人宅へと身をひそめる。マリアの友人 関谷じゅんこは都会に憧れ上京し、父親もわからぬまま妊娠し帰ってきて、マリアの説得により出産を決意し、子どもを育てていた。ただならぬ来客に怯える関谷。関谷親子を守るため、マリアはモンと二人きりで話をして、トシを排除しようと説得を開始する。

何も知らないイノセントなモンに、ウソや裏切りを教えることに煩悶するマリア。マリアの想いは通じ、モンへの説得は成功する。

タイミングが悪く、トシの父親と警察によるトシへの出頭呼びかけが始まる。テレビ中継でその様子を見たトシは関谷親子を殺害する。モンの説得が終わり、マリアが部屋に戻るとそこには関谷親子の死体が待っていた。一瞬にして髪が白くなり、失神するマリア。モンはトシを殴り、トシは気絶する。

失神したマリアを抱え、駅前まで歩くモン。

マリアが目をさますとモンは機関銃とマリアを抱え、踊るように駅前で人殺しをしていた。

モンは再び人殺しのできる体に戻ったのだ。

その後車に乗ったトシが合流し、山へと逃げるがついに青森県警の塩見巡査長の部隊に追いつかれる。

銃撃戦の末、マリアが警察の銃弾に倒れる。絶望したモンの目の前に、ヒグマドンが天から落下してきた。

 

 【感想】

モンに近い人はモンに好意的なのが、ちょっとご都合展開か。

マリア⇆モン←トシの三角関係が成立。

この時点ではかつて自分のチャットルームに来て気になっていたマリアと同一人物では?とトシは思っていたりもする。

章は戻って話もズレるが、この作品の90年代インターネット感はかなり的確で、顔も知らない人に自分の秘密や心情を吐露する一種の懺悔室のような様相がインターネットにはあったのだ。今はコテハン&顔写真になったので、深さが減って軽めの話題が増えたな、と思う。

わたしが好きな薬師寺さんと秋田県警の人はこの章でリタイアで残念。

 


4.[ヒグマドン捕獲後の世界編]

【あらすじ】

ヒグマドンの襲来により、トシの逮捕は成功したがモンには逃げられてしまう。

ヒグマドンは首都東京を目指し南下。自衛隊によるヒグマドン捕獲作戦が行われる。大変スペクタクルのあるシーン。

ヒグマドンは都内に入る寸前で捕獲完了。

トシの警察での事情聴取により、トシとモンの出会いが語られる。トシのチャットルームに来ていたマリアは、かつての同僚だった。トシは聴取中、自分のモンとの出会いやモンに感じた運命が、ただの思い込みであったことに気づいたが、時すでに遅く、日本各地にしかけた爆弾が爆発し、凄まじい数の被害者が出た。

その後アメリカからの要望により、ヒグマドンがハワイへと移送が開始される。移送中にヒグマドンが再度の巨大化を開始。空母を沈め、一種の島のようなサイズへと変わる。ヒグマドンの巨大化は世界的なパニックを引き起こし世界中の人々が想起した。

「今こそ使え 核兵器

事態に対しアメリカは核攻撃を実施。ヒグマドンの表面に一部焦げ跡をつけるだけにとどまるもヒグマドンの急成長は停止した。

その後核兵器についての世界の認識は、良い核とあまり良くない核というように変わる。これまでと変わらない日常へと世界は回帰しようとしていたが、人々の間で奇妙な言葉が流行り始める。

「抗うな。受け入れろ。すべてはつながっている」

ヒグマドンの襲来により警察から逃れたモンと彼のシンパが唱え始めた言葉だった。

世界中の反政府組織がモンを受け入れ、またモンを偶然捉えた若手芸術家がモンのつぶやく詩のようなものを作品化し、それがモンの目撃情報として世界中に報道される。

拡大するモンのシンパ。

世界中でテロが起こる。

テロに巻き込まれ、警察から奪還されるトシ。トシはトシモン事件の被害者たちに拉致され、惨殺される。テロが吹き荒れる中、ただ事件を忘れようと動く世間に反し、新聞記者星野はモンの出生を調べる。それはモンによって殺された飯島の弔いでもあった。

星野はモンの正体が、親から捨てられた子どもで、モンが思わせぶりにはいた言葉のすべては錯乱した哲学青年が少年時代のモンを拉致し、こき使っていた時に壁に語りかけるように説いた無意味な哲学の断片だったことを知る。

その後、アメリカの各地でモンのシンパが核兵器を乗っ取り、世界中に核の雨を降らせる。

人類の歴史が終わりを告げる頃、一つのロケットが遺体を乗せて飛んでいた。その遺体はモン。

彼の遺体はやがてどこかの惑星にたどり着き、遺体に付着したバクテリアから生命が芽吹く。

モンは生命の種となったのだ。

 

【感想】

 この編になると事態の進展が早く、個々人の意思よりはもはや現象となってしまって居るが見事に話を畳んだなぁと。

トシのモンとの出会いは、わたしが個人的に粗暴な人と付き合っていた時期もあって自分と重なるところもあり。そこで学んだのは何か起こりそうな人と付き合っても、特に何も起きないなということか。これは身に染みたので、以降自分の指針になっている。打算的な付き合いは、結果的になんにもならないですね。

 

作品全体のテーマは

「どいつもこいつもバカばっかりだ」

ということなんだと思います。

 

本当に一番面白いと思って読んだの?

とか言われそうなテーマのつかみ方ですけど。

でもそう書いてあるんだから仕方ないよね。

 

 

17.オススメはしないけど今まで一番面白いと思った漫画について書くー1

『ザ・ワールドイズマイン』

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン  全5巻 完結セット [コミックセット] (ビームコミックス)

本当に面白い漫画だった。

ざっくり作品のテーマを書くと

「(作者が)俺の思う『世界』ってこんな感じだけど、お前らどう?」

という感じだろうか。

 

これについてはネタバレしつつ書かないと何も語れないので、ここからはネタバレしつつ書く。

 

というわけでここからは読んだことがある人向け。

ここでは本編を以下のように分ける。

1.[青森警察署襲撃編]

2.[襲撃犯逃避行編]

3.[大館市ヒグマドン災禍編]

4.[ヒグマドン捕獲後の世界編]

 

以下、各編のあらすじと感想。

 本来はあらすじと感想と読み込みを書くのがふさわしいのだろうけど、読み込みについては別の機会に。あらすじのまとめ方から読み取っていただければな、と。(そこ拾うんだ、とかね)

 

1.[青森警察署襲撃編]

【あらすじ】

トシとモンは、車に満載した消火器型爆弾を持って、日本縦断の旅をしていた。爆弾を日本の各所に仕掛けるたびに良心の呵責に苛まれるトシ。そんなトシの態度にイラつくモン。モンは一計を案じ、トシを青森警察に取り調べさせて自らの手で奪還する遊びを思いつく。つてを使い、重火器を手に入れて青森警察署を襲撃するモン。重火器の威力は圧倒的で、青森警察の被害は甚大。ついにトシの奪還に成功する。モンに救い出されたものの、警察署をSWATに囲まれたトシは、人質の警察官もモンに殺され、やぶれかぶれの要求を警察に通告する。

「人を殺してはいけない理由は何か?」

「人命の価値はどのくらいか?」

「差別と貧困がなく、全ての人が明るく楽しく過ごせる世界の実現」

 

話のワキを固める主要メンバもこの頃から登場。

人質の生死がわからず、突撃指示が出せない 塩見巡査長。

自分の出世と実利にしか興味のないSWAT隊長 薬師寺

犯人からの要求の答弁で紛糾する国会と、それを冷ややかに見つめる総理大臣 ユリカン。

事件が公になる前、つかの間モンとの間に絆を感じた少女 マリア。

 

【感想】

超越者然としたモンの発言。

それの裏付けのように振りかざされる暴力。

とにかく描写がすごい。ここまで描くか、というエグさもあるし、すれ違うだけのモブキャラには悪意を込めて一目でわかる性格付けがされてるのもすごい。田舎の旅館の内装とかもすごい。(ソファの背もたれになんかよくわからんレースの背当てとか乗ってて、確かにこういうとこにはこういうのがあるよな、と思う)

 

わたしは自由が好きなので、その意味で超越者の視点にはほとんど無条件に惹かれてしまうのですが、暴力を裏付けとして用いているのには嫌悪感があるし、こんなん不意打ちされたら簡単に覆っちゃうじゃん、という感想もあり。

とは言え、このモンの行動には目が離せないなと思いました。主張の全貌は知りたくなります。漫画だとカメラが近いけど安全が保障されているので。


2.[襲撃犯逃避行編]

【あらすじ】

 トシとモンの騒動と時を同じくして、常識では考えられないサイズのクマの目撃情報が寄せられていた。クマは小学校を襲い、凄惨な事件が起こる。事件は世間の耳目を集め(この事件に張り合うため、モンは青森警察署襲撃を行う)、クマはヒグマドンと広く認知される。ヒグマドンを追う新聞記者 星野とクマ退治の専門家 飯島のエピソードが静かに始まる。

 

 トシモンの青森警察署襲撃の際、巡査長塩見の対応が遅れたため、トシとモンは下水道への道を発見して警察の包囲から逃れることに成功していた。モンは逃走の際にトシに殺人を犯させる。その後雪山での逃避行中、トシが気を失っている時にモンはヒグマドンと遭遇する。すれ違いざまトシが殺される。圧倒的なヒグマドンの力に、モンはこの時初めて恐怖する。ヒグマドンの爪がモンをバラバラに引き裂いた時、気がつくとモンは山の中に立っていた。トシも生きていた。夢だったかどうかもわからないが、モンの心境に変化が訪れる。モンは人の痛みを想像できるようになっていた。モンの変化に後ろ盾を失ったような気分になるトシ。民家を襲い、身を潜めたあと報道によりトシの母が自殺したことを知る。激昂し衝動的に民家の住人を殺害するトシ。臆病だったトシにも変化が訪れる。

パソコンを使ってホームページを開設。世界をアジる。センセーションな事件の犯人からのメッセージを受け、社会は混乱しモンをカリスマと崇めるもの、殺してほしいやつのリストをアップロードする人なども現れる。事態を重く見た総理大臣ユリカンは、人を殺してはいけない理由と、人は人を殺していい世界を望むのかどうかと説明するテレビ番組を作成する。

 

【感想】

トシの母親のシーンはかなりの分量を使って描かれており、ものすごく悲惨としか言えない。実際にISに参加した若者の家族も似たようなものではないだろうかと想像される。リアリティを持って痛い描写、辛い描写が続くが、絵は被害者目線というかスカッと爽快な暴力描写ではなく、痛くてじめじめしてみじめな描写が続くのには、作者の強い倫理観を感じる。

いわゆるタメのシーンのため、襲撃の後始末というか、こうしたらこうなるよなというところをとにかく克明に書いている。うわーここまで描くかーという感じ。

 

一旦ここまで。

需要があるかどうかもわからなくなってきたので一旦放出。

残り2編はまた今度。

 

3.[大館市ヒグマドン災禍編]
4.[ヒグマドン捕獲後の世界編]