66.わけのわからない世界について

わけのわからない世界に住んでいる。

「日本はPCR検査数が少なく、そのため日々の感染者数の発表は意味がなく、感染判明者数と呼ぶのが適切で、その数値に一喜一憂するのはトンマである。唯一参考になる統計は「超過死亡」だけである」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

「闇雲に検査すると無症状・軽症者が殺到しクラスター化する怖れがある上に、医療資源を消耗し重症者の治療に手が回らなくなり死亡者が増えてしまうので、専門家会議は、重症者の治療に医療資源を投入する方針をとりました。この政府方針のお陰で、日本の死者数は少ないのです。」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

「世界の人々は日本のコロナ対策の遅れ、大規模な検査を行わない方針について疑問を持っています」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

「マスコミは世界で日本が褒められていることについて報道しておらず日本を貶めることを目的としている」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

「検事の任期延長は高齢化社会のための公務員任期延長の一環なのでこれが頓挫することで若い世代が損をする」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

「政府が配ると言ったマスクはまだ届かない。意味なかったのでは?」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

「マスクを全世帯に配ることを政府が宣言したためマスクの転売が無効化され、結果的にマスクの価格を下げた。また、布マスクでもよいという風潮を作ったのも見逃せない」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

「政府は真面目に実直に対応しているのに、モンスタークレーマーがいるからマスクを検品しなければならず配布が遅れ、モンスタークレーマーがいるから検査を行おうとすると医療崩壊が起きる」

 

わけのわからない世界に生きている。

「自他分離ができてないから政府への批判を自分への批判と勘違いするの。現場に真面目な人が多いことと、全体の方針が間違えていることは同時に成立するの。太平洋戦争の時もそうだった。今回もそうならないとは限らない」

 

わけのわからない世界にいる。

「思考には自分の心の中だけでするものではなく、対話を通した中で積み上げていくものもある。多くの思考は後者によって育まれてきた」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

「誤った意見、事実と異なる情報が一人歩きするので、不確実なことは言うべきではない」

 

わけのわからない世界に住んでいる。

わけのわからない世界に住んでいると、わかる範囲のサブカルチャーにのめり込んで、自分だけが気づいた細部に耽溺したくなる。そうするとわけのわからない世界が見えなくなるから。そうじゃなくても仕事に集中してお金を稼ぐことに夢中になっていればわけのわからない世界は見えなくなる。

でもわけのわからない世界ができてしまった原因には、そうやって多くの人が自分ごとにかまけていたことが原因にある。山にゴミを捨てれば環境破壊だと気づくが、ゴミを見ないようにすることもまた環境破壊なの。

 

ひとまずは

①確定未確定を含め、情報が整理されていること。

②政治など影響が大きいものについては決定までのプロセスが明らかになること(どんな選択肢があって、何を重視した結果どれが選ばれたのか。コーナーケースにはどの程度まで対処するのか、など)

 

この①②までを求めることが、ほとんどの人が合意できるラインだと思う。のでわたしの政治スタンスの根底はこれでいきます。

 

わけのわからない世界に住んでいる。

一人一人は会って話せば気の合う友人であったり、いい人であったりもするのだろう。

学生時代、「反出生主義」の友人が居た。その頃はそんな主義の名前も知らず、会った頃の友人はその思想を持っていなかったが。

わたしと友人は趣味を通じて出会い、好きなモノについての情報を交換し、そのうち思想を語りあうようになり、理想的な友情を育み、最終的に友人は「反出生主義」になった。その後友人とは全く別の些細なことでケンカ別れして会っていない(わたし自分の人生を生きる必要があった)が、彼がわたしの中に残した「反出生主義」については、まだ答えられていない宿題として折に触れて考えてしまう。

 

わたしの中では「反出生主義」と「子どもには最高の教育を与えなければ」とは地続きにあるし「お客様は神様です」なんていうダサい思想もその地続きにある。どれも根底は「他者の心なんてわからないから対話不能、その上で「こっちは最大限やってますから」という言い訳を守るための「立場主義」を経由して繋がっている。

「立場主義」で育てられる子どもは幸せか。

 

いずれにしてもそれでは「反出生主義」には勝てない。友人の「反出生主義」は「すでに生まれた命に対してもどーこー言うのはナシ」ではないストロングスタイルだった。

わたしは彼に生きて欲しかったので食い下がる。

「情報を整理して、プロセスを明らかにしていけば、ちょっとマシになっていくじゃないですか。そういう積み上げが希望ですよ!」

と語るわたし。

「でもまだまだゴミじゃん。ない方がマシ」

と語る友人。

 

まだ友人の勝ち。

勝てない勝負を続けている。

勝てなくていいとは思ってない。

時間無制限の勝負なので、寿命が尽きるまでには勝つ。