51.インド旅行中の交渉のことを書いてみる

インド旅行記録2記事目。

インド旅行と言えば交渉である。駅から繁華街に出るためのタクシーやリキシャの代金、ホテルに着けば一泊の代金やエアコンの有無を巡ってと、なにをするにも値段が決まっていないor値切りが可能orボッタクリでふっかけてくるためインドの旅は交渉と切り離すことができない。

 

というわけで交渉についての印象的なエピソードを二つ書いてみる。

 

1

前回の記事で知り合ったサークルのメンバーと行動していた頃のこと。メンバーの一人がインド飯がダメで、マクドナルドやピザハットカロリーメイトなどで食いつないでいたが、合流して5日目でダウン。

ベナレスに着いた我々はちょっとお高めの宿を取ることに。とは言え安宿には違いないので個人経営の宿だが。

話の流れで、宿のオーナーからインターネットに繋がるコンピュータを貸してもらえることになった。心優しい私はその町のジャパニーズレストランを検索し、メンバーを元気づけようと考えたのだ。オーナー部屋でPCを使わせてもらう。マウスポインタがハエの画像に差し替えられていたりと、イタズラ心満載で思わず「 oh ! This is India」と呟いてしまう。

しかし検索が、いまいち引っかからない。日本人が経営するゲストハウスが見つかったので、そこで改めて聞いてみることにして諦めた。するとオーナーから「何を探していたんだ?」と尋ねられた。「ジャパニーズフードレストランを探していました」と答える。「それなら簡単だ。ちょっと待ってろ」とオーナー。部屋の外からコックを連れて戻ってくる。

「彼がジャパニーズフードを作る!」胸を張るコック。

「いやいや。無理だ」とわたし。

「どうしてだ。ベジタリアンなのか? 彼はベジタリアンフードも得意だ」とオーナー。

「ここには日本の調味料がない。インド料理はインドの調味料を使うから全てマサラフードになってしまう」とわたし。英語力がないながら頑張った。

「ソイソースならあるぞ! おい、倉庫から持ってこい」とオーナー。走り出すコック。戻ってくるとその手には一升瓶サイズのsoy sourceが。またも胸を張るコックとオーナー。

もはやこれまで。わたしはすっかり言い負かされてしまった。しかしここでコックに任せるとマサラフードになることは火を見るより明らか。次の一手がわたしに残された最後の手段になる。

「コックではなく、わたしやわたしのフレンドがキッチンを使って料理してよいか?」

「ok」とオーナー快諾。

マジでか。いいのかよ。なんでも言ってみるもんだなインディア。

仲間の部屋に戻って報告

「話の流れで明日料理することになったから、なんかメニューリクエストある? しょう油あるから肉じゃがとチャーハン作るつもりだけど‥」

 

翌日、調理中にソイソースを味見をしたら黒豆のような味がして、マジにソイのソースだったことが判明。塩コショウで味付けしてポトフとチャーハンにする事でことなきを得た。久しぶりのノンマサラフードの優しさに救われたのであった。

 

2

一人旅になって旅慣れた頃。カルカッタで。

前日に逃げられない状況(街で声かけて来た外国人と行動してたらそいつもグルで土産物屋の2階の倉庫で、出口まで数人パスしないといけない状況)でパシュミナのストールを買わざるを得なくなり、ある程度粘った値切りの末一番安いものを購入。

翌日復讐の念に駆られたわたしは別のストール屋で値切りに値切ってストールを買ってやろうと考えていた。

株式投資におけるナンピンの理論である。(なおナンピンは一般的に愚策である)

朝から暇そうなストール屋に行き、モノを見てはチャイ屋で店員分のチャイを頼み、1時間、2時間と関係ない雑談や旅行話、店員の個人的な話を聞きながら(持っている犬の写真をあげたりとかホントに関係ないことをしていた)粘り強く値段交渉したのだ。

ついには「いったいユーはいくらなら買うんだ?」というので「50ドル」とメチャクチャ安い値段で言った。帰れ帰れと店員のジェスチャー。「実はその50ドルはエマージェンシー用にとっておいた50ドルなんだ。わたしは明日日本に帰る。旅の最後にこいつを買ってインディアを離れることにしたいんだ」大ウソである。わたしはあと2日その街に居る予定だった。情にほだされたのかめんどくさくなったのか店員は「OK」と言った。

「ホテルに戻って50ドル持ってくるよ。映画見るから16:00にまた来る」と伝えて店を出る。

店を出て日本円とルピーしか持ってないので50ドルを作ることに。日曜だったので銀行もやってない。両替屋に声かけるも、「50ドルなんて今ないぜ」との返事。

「どうしても必要なんだ。多少レート悪くてもいい」と言うと「わかったなんとかする」と両替屋。

50ドルの目処がつくとわたしは映画館に。

その後両替屋に戻るとのんびりチャイ飲みながら「あんたラッキーだぜ。50ドルは準備できた」とニタニタ笑う両替屋。

「色んな店のドル札を当たったんだ。ジャスト16:00に、 商店街の店に50ドル入る。そいつをあんたに渡す。レートは‥‥」

「待って待って! それってストール屋じゃないの?」

「お、おう」

「ダメダメ。そのストール屋はダメ。別の店当たってなんとか50ドル見つけて来て!」

おわかりと思うが、この両替屋があてにしている50ドルは、わたしが払う予定の50ドルなのだ。タイムパラドックスが発生していたという話。いやー、雑なウソで乗り切ろうとすると大変なことが起きますね。

というところでこの話は終わり。

 

その後、両替屋の部下数人が走り回ってくれてなんとか50ドルを得てことなきを得ました。