17.オススメはしないけど今まで一番面白いと思った漫画について書くー1

『ザ・ワールドイズマイン』

真説 ザ・ワールド・イズ・マイン  全5巻 完結セット [コミックセット] (ビームコミックス)

本当に面白い漫画だった。

ざっくり作品のテーマを書くと

「(作者が)俺の思う『世界』ってこんな感じだけど、お前らどう?」

という感じだろうか。

 

これについてはネタバレしつつ書かないと何も語れないので、ここからはネタバレしつつ書く。

 

というわけでここからは読んだことがある人向け。

ここでは本編を以下のように分ける。

1.[青森警察署襲撃編]

2.[襲撃犯逃避行編]

3.[大館市ヒグマドン災禍編]

4.[ヒグマドン捕獲後の世界編]

 

以下、各編のあらすじと感想。

 本来はあらすじと感想と読み込みを書くのがふさわしいのだろうけど、読み込みについては別の機会に。あらすじのまとめ方から読み取っていただければな、と。(そこ拾うんだ、とかね)

 

1.[青森警察署襲撃編]

【あらすじ】

トシとモンは、車に満載した消火器型爆弾を持って、日本縦断の旅をしていた。爆弾を日本の各所に仕掛けるたびに良心の呵責に苛まれるトシ。そんなトシの態度にイラつくモン。モンは一計を案じ、トシを青森警察に取り調べさせて自らの手で奪還する遊びを思いつく。つてを使い、重火器を手に入れて青森警察署を襲撃するモン。重火器の威力は圧倒的で、青森警察の被害は甚大。ついにトシの奪還に成功する。モンに救い出されたものの、警察署をSWATに囲まれたトシは、人質の警察官もモンに殺され、やぶれかぶれの要求を警察に通告する。

「人を殺してはいけない理由は何か?」

「人命の価値はどのくらいか?」

「差別と貧困がなく、全ての人が明るく楽しく過ごせる世界の実現」

 

話のワキを固める主要メンバもこの頃から登場。

人質の生死がわからず、突撃指示が出せない 塩見巡査長。

自分の出世と実利にしか興味のないSWAT隊長 薬師寺

犯人からの要求の答弁で紛糾する国会と、それを冷ややかに見つめる総理大臣 ユリカン。

事件が公になる前、つかの間モンとの間に絆を感じた少女 マリア。

 

【感想】

超越者然としたモンの発言。

それの裏付けのように振りかざされる暴力。

とにかく描写がすごい。ここまで描くか、というエグさもあるし、すれ違うだけのモブキャラには悪意を込めて一目でわかる性格付けがされてるのもすごい。田舎の旅館の内装とかもすごい。(ソファの背もたれになんかよくわからんレースの背当てとか乗ってて、確かにこういうとこにはこういうのがあるよな、と思う)

 

わたしは自由が好きなので、その意味で超越者の視点にはほとんど無条件に惹かれてしまうのですが、暴力を裏付けとして用いているのには嫌悪感があるし、こんなん不意打ちされたら簡単に覆っちゃうじゃん、という感想もあり。

とは言え、このモンの行動には目が離せないなと思いました。主張の全貌は知りたくなります。漫画だとカメラが近いけど安全が保障されているので。


2.[襲撃犯逃避行編]

【あらすじ】

 トシとモンの騒動と時を同じくして、常識では考えられないサイズのクマの目撃情報が寄せられていた。クマは小学校を襲い、凄惨な事件が起こる。事件は世間の耳目を集め(この事件に張り合うため、モンは青森警察署襲撃を行う)、クマはヒグマドンと広く認知される。ヒグマドンを追う新聞記者 星野とクマ退治の専門家 飯島のエピソードが静かに始まる。

 

 トシモンの青森警察署襲撃の際、巡査長塩見の対応が遅れたため、トシとモンは下水道への道を発見して警察の包囲から逃れることに成功していた。モンは逃走の際にトシに殺人を犯させる。その後雪山での逃避行中、トシが気を失っている時にモンはヒグマドンと遭遇する。すれ違いざまトシが殺される。圧倒的なヒグマドンの力に、モンはこの時初めて恐怖する。ヒグマドンの爪がモンをバラバラに引き裂いた時、気がつくとモンは山の中に立っていた。トシも生きていた。夢だったかどうかもわからないが、モンの心境に変化が訪れる。モンは人の痛みを想像できるようになっていた。モンの変化に後ろ盾を失ったような気分になるトシ。民家を襲い、身を潜めたあと報道によりトシの母が自殺したことを知る。激昂し衝動的に民家の住人を殺害するトシ。臆病だったトシにも変化が訪れる。

パソコンを使ってホームページを開設。世界をアジる。センセーションな事件の犯人からのメッセージを受け、社会は混乱しモンをカリスマと崇めるもの、殺してほしいやつのリストをアップロードする人なども現れる。事態を重く見た総理大臣ユリカンは、人を殺してはいけない理由と、人は人を殺していい世界を望むのかどうかと説明するテレビ番組を作成する。

 

【感想】

トシの母親のシーンはかなりの分量を使って描かれており、ものすごく悲惨としか言えない。実際にISに参加した若者の家族も似たようなものではないだろうかと想像される。リアリティを持って痛い描写、辛い描写が続くが、絵は被害者目線というかスカッと爽快な暴力描写ではなく、痛くてじめじめしてみじめな描写が続くのには、作者の強い倫理観を感じる。

いわゆるタメのシーンのため、襲撃の後始末というか、こうしたらこうなるよなというところをとにかく克明に書いている。うわーここまで描くかーという感じ。

 

一旦ここまで。

需要があるかどうかもわからなくなってきたので一旦放出。

残り2編はまた今度。

 

3.[大館市ヒグマドン災禍編]
4.[ヒグマドン捕獲後の世界編]